老年看護とは、高齢者を対象とした看護ケアのことです。高齢者の多くは、これまでの人生の中で培ってきた経験があり、それに基づく価値観や考え方があります。加えて、人との関わり方についてもその人によって大きな違いがあるでしょう。老年看護では、それぞれの高齢者がこれまでに歩んできた人生や考え方を尊重しながら、その人にぴったりのQOLを支援することが求められます。
老年期は誰もが迎える最期であり、老年看護の最期にはかならず死があります。そこに向かって患者さんがそれぞれどのように人生を全うするかを、患者さんやその家族と前向きに考え、看護のスペシャリストという立場からサポートするのが、老年看護ケアにおける大きな役割です。高齢者には、若い頃と比べて身体機能や精神機能が低下しているという特徴があるため、そうした点も看護計画を立てる際に重視しなければいけません。
看護の専門分野には、多種多様なものがあります。その中で老年看護ケアでは、積極的な治療や完治を目指すことを優先順位とするのではなく、患者さんが持っている残存機能をうまく活用することを重視するケアを行います。この点が、一般的な医療ケアと老年看護ケアとの大きな違いです。
老年看護に従事する際には、看護師は看護に関する知識だけでなく、介護に関する知識やスキルも持っているのが理想です。多くの高齢者は、年齢とともに何かしらの介護支援が必要となり、そうした支援も含めた看護ケアを提案することが、患者さんにとってのQOLを向上させる上で重要になってきます。